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執筆者の写真くどう まやか

吠えやイタズラ、無視したら治る!の落とし穴【犬のしつけ】


犬の幼稚園

こんにちは!大阪市福島区のoluolu dog school、ドッグトレーナーの工藤です。


昨今、いろーんなところでワンちゃんのしつけ方のブログや動画などを見かけるようになりました。

様々な方法がありますが、よく見かけるのは「吠えたら無視」「イタズラや甘噛みも無視」という手法です。

でも、こんなことありませんか?


無視してるのに一向によくならないどころか、悪化してる気がする…。


oluoluでも対処法として「無視してください」とお伝えすることはたくさんありますが、実はこの「無視」、大きな落とし穴が3つあります。

この落とし穴にはまってしまうと、無視していてもよくなるどころかより吠える・イタズラするようになります。

今回はこの落とし穴について解説していきます!


「無視する」の原理



陽性強化トレーニング


落とし穴を解説する前に、無視をすると吠えやイタズラが減るのはどういう原理なのかをご説明します。

ワンちゃんが行動を学習するメカニズムの一つとして、「オペラント条件付け」というものがあります。


本校でも用いている陽性強化と呼ばれるトレーニング手法で使っている部分だけ解説します。


A正の強化:何かを与えることで行動を強化する(増やす)

きっかけ⇒行動⇒強化子⇒行動が増える

例1 「オスワリ」という合図⇒座る⇒ご褒美がもらえる⇒オスワリの合図で座る

例2 遊んでほしい⇒吠える⇒声をかけられる⇒遊んでほしい時に吠える


B負の弱化:何かを取り去ることで行動を弱化する(減らす)

きっかけ⇒行動⇒弱化子OR何もない⇒行動が減る

例1 遊んでほしい⇒吠える⇒吠えた対象がいなくなる⇒吠えが減る

例2 遊んでほしい⇒吠える⇒何も起こらない⇒吠えが減る


本来トレーニングは人が望んでいる行動をA正の強化で増やしていき、望まない行動をB負の弱化で減らしていきます。

「無視をする」というのはこの負の弱化を繰り返し学習することで成り立つのです。


そして、Aで一度学んだ行動をBの無視するで頻度を減らしていくことを動物行動学では消去と言います。

たとえば、「吠えたら構ってもらえた」というAの学習を「吠えても構ってもらえない」と変えていくことです。


無視してるのによくならない!その落とし穴とは?


犬のしつけ

①消去バースト


前項でお話ししたとおり一度強化された行動に対して、何も起こらない(無視する)ことで行動を減らしていきます。

この消去には、必ず消去バーストと呼ばれる期間が存在します


よくある消去バーストでいうと、ハウストレーニングです。

ハウスから出してほしい⇒吠える⇒声をかけてもらえた・ハウスから出してもらえた⇒ハウスから出してほしい時に吠えるようになる

という学習をしてきたワンちゃんがいるとします。


これまで吠えたらサークルから出してもらえたという確信があるワンちゃんに、いきなり無視をしてみたらどうなるでしょう。

今までは出してくれてたのに!!という気持ちから、もっと強く・長く・大きく吠えます。


この現象は人間にも起こります。

たとえば飲食店での呼び鈴。注文をしようと思ってベルを鳴らしても来ない。何度か慣らしてみたり、「すいませーん!」と声を出してみたり、さらに大きな声で呼んでみたり、席を離れて店員さんを探しに行ったり…あれこれ試行錯誤してみて、もし来なかったら店を出ることを考えるでしょう。

そして、そのお店には二度と行かないと思います。


それから自動販売機。お金を入れてボタンを押しても飲み物が出てこない。もう一回お金を入れたり、ボタンを連打してみたり…。色々試した結果、飲み物が一向に出てこなかったらあきらめるでしょう。その自販機ではもう飲み物は買わないでしょう。

リモコンのボタンなんかもそうですね。色々試してつかなかったら、買い替えを検討されるでしょう。


これらは「○○をしたら××が手に入る」という学習がある前提で、それがなされなかったときにあらゆる行動を試します。

この「あらゆる行動を試す」のが消去バーストで、あきらめるのが消去です。

そして、消去バースト中はこれまでかなっていた望みがかなわないわけですから、いらだちもあります。


そしてこの消去バーストこそが、「無視する」ことの最大の落とし穴です

一時的に行動が強くでるので、飼い主さんは「きかなかった、あわなかった」と思って無視するのをやめたり、あまりにも吠え声が大きすぎて根負けしてしまい、結局ハウスからだしてしまう。

こうすると、ワンちゃんは「このくらい強く長く吠えれば望みが叶うんだ!」とさらに良くない学習をしてしまいます


たとえば、ハウスから出してほしくて吠える⇒30分無視したけど観念して出した⇒次からは30分吠え続ける…この確信が長く続くと、4時間でも5時間でも吠える犬になるのです。


甘噛みの場合:

遊んでほしくて噛む⇒無視される⇒強く噛む⇒無視しきれずに「やめて!」と声をかけてしまう⇒次から強く噛むようになる


イタズラの場合:

暇つぶし・遊んでほしくてイタズラする⇒無視される⇒かみちぎってみたり、振り回してみたりする⇒飲み込むのが怖くて止めてしまう⇒次から噛みちぎるようになる


無視をしたら悪化した、というのは大体この消去バーストを知らずに、「悪化しちゃったから無視をやめよう!」「耐えられないから止めちゃおう」でリアクションをして行動が最大強化されているケースがほとんどです。


消去バーストは「消去」が効いている証拠です。

焦らず無視を続けましょう。


②無視しきれていない


犬の幼稚園

最初に触れた「オペラント条件付け」における強化子と弱化子の定義は、何をしたかではなく、行動が増えたかどうかによって変わります

つまり、行動を増やしたくて強化子のつもりで与えても、行動が増えなければ強化子にはならないということです。

食にあまり興味がなく食べムラがあるワンちゃんに、オスワリの強化子としてゴハンをあげて座らなかったとしたら、その子にとってゴハンは強化子ではないですよね。


そして同じように、弱化子として行ったつもりでも、行動が減少しなければ成立しません。

「無視をする」という方法が推奨されているのは、「こら!」「静かに!」「NO!」など叱ったつもりが、構ってもらえてうれしい!というご褒美になっているケースがあるためです。


よくあるのは、

吠えても無視してます。という飼い主さんとワンちゃん。実際に様子を見てみたら、確かに何も話しかけてはいないけどジッと目を見つめている。というケース。

この「注目してもらえた」というのも、ワンちゃんにとっては強化子になることがあります。


つまり、

吠えた⇒無視された⇒吠えを減少させる を狙っていたのに、

吠えた⇒注目してもらえた⇒吠えたらいいことがあった と学習してしまうんですね。


別のよくあるケースは、「無意識で触ってる・抱っこしてる」です。


これは人間側にオペラント条件付けが入っていて、

犬が吠えた⇒抱っこした⇒吠えがやんだ

という学習の結果、ほぼ反射的に吠えたらなでたり抱っこしてしまうという現象です。

「吠える」という人間にとってのストレスが取り去られることで、抱っこすることが強化されるので、この条件付けを負の強化を言います。


なので、飼い主は無視しているつもりでも無意識になでたり抱っこしたりして、一向に吠えが減りません。


そんなことってある?と思うかもしれませんが、本当にあるんです。

だから私たちは飼い主さんに、無視の定義を「見ない・触らない・声をかけない!石になる!」と伝えています。


③ルールが曖昧


犬 吠える

最後の落とし穴は、無視されるときもあれば、構う(止める)ときもあるケースです。

・いつもは無視するけど、あまりにも吠えやイタズラがひどい時や、周囲に人がいて迷惑をかけられないときなど、思わず止めてしまった。

・家族によって無視する人もいれば、構う人もいる

という場合です。


これを動物行動学では「部分強化」といって、より行動を定着させるときに用いる手法です。

人間も含めて、変動的に強化子が出るものには、より強く長く行動をとる習性があります。

つまり、ルールが曖昧で無視する・しないが変動的だと、よりその困った行動を強化してしまうのです。


人間でいうとこの部分強化が最大化されているのが賭博・ギャンブル・くじです。

あたるときもあればあたらないときもある。あたったときの強化子が魅力的で、ついついのめり込んでしまうというのはこの部分強化によるものなのです。


本来、ワンちゃんのトレーニングにおいて望む行動を教えるときは、

連続強化(毎回強化子を与える)⇒部分強化(強化子を変動的にする)という強化スケジュールでより行動を定着させていきます。


つまり、構ったり構わなかったりするのは、吠え・イタズラ・甘噛みなどを強化しているのと同じなのです。

一度部分強化スケージュールに入ると消去をするのは難しく、相当な根気と時間がかかると思っておきましょう。


無視をすると決めたなら絶対に無視する。家族で統一する。

治るまで無視できないシチュエーションを作らない(公共の場にいかないなど)といった覚悟が必要です。


「無視する」が適していないケースもある


犬 噛む

強化子が飼い主と犬との間で完結するものであれば、消去(無視)する手法はとても有効的です。

しかし、そもそものキッカケが外部的な要因の場合は基本的には消去されません。


代表的なものだと、お散歩中の人や犬への吠え・噛む、お手入れ時の噛みなどです。

これは知らない人や犬がアヤシイ、不安だという気持ちや、お手入れがいやだというネガティブな気持ちから吠えたり噛んだりしているので、無視をしても改善することはできません。


かといって叱ったり止めたりすればよいのかというとそういうわけではなく、「不安だ」「嫌だ」という気持ちそのものを緩和するトレーニングが必要です。

逆に、叱ったり止めたりすることで様々な学習が複雑に絡みつき、より強くその問題行動がでるようになります。


まとめ


いかがでしたか?消去(無視する)は正しいやり方を続ける根気があれば、とても有効的かつシンプルに伝わりやすいトレーニング方法です。


また、犬にとって大好きなことを要求する行動なのであれば、吠える・噛む・イタズラするといった困った行動の代わりにこうしてほしい、という代替え案を教えてあげるのがよいと思います。

遊びたいなら、甘噛みせずにおもちゃを持ってきてね。

抱っこしてほしかったら、目の前でオスワリをしてね。

など、代わりの選択肢をたくさん教えてあげましょう。


それから、単に発散が足りずに暇で吠えたり噛んだりしている場合、単に無視をしても他のところで別の行動が出るだけです。

根本的な改善をはかりましょう。


○○しちゃだめ!というのはあくまで人間の都合にすぎません。

お互いにとってハッピーな関係がとれるとよいですね。


また、場合によっては無視しきれないこともあると思います。

・他のワンちゃんがいてなかなか無視が進まない

・甘噛みが痛すぎて我慢できない

・声が大きすぎて無視できない

など。そんなときは、ぜひ一度oluoluにご相談くださいませ。


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